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富士北麓の湧水

写真左・・泉瑞の水が引かれた浅間神社

富士北麓の湧水は忍野村から大月方面に向かって流れる桂川沿いに多い。

先月に続いて富士北麓の湧水を追いかけた。

忍野八海(環境省選定 名水百選)
その桂川の源流となる忍野八海は毎秒2.9立法メートルの水量をほこる代表的な湧水源である。
(水量データーは平成6年忍野村発行「忍野の自然」P9を参照して数値のある6池を合計した値である)
泉瑞
私も知らないほどの昔は池があったと言われる上吉田の泉瑞も代表的な湧水である。
泉瑞の湧き口には蛇口が設けられ容器に入れやすくなっている。
遠く県外からもこの水を求めて訪れる人が絶えない。
この水は上吉田の浅間神社にも引かれている。昔は6000名の水をまかなったと記録があった。(昭和23年「富士山域の用水源開発の可能性」農林省開拓研究所)
西桂浅間神社
桂川小学校の上にある西桂浅間神社。
ここには、湧水口があり、小さな池に清廉な水がコンコンと湧き出している。
6月この池には地元の人が「キンギョソウ」と呼ぶバイカ藻がかわいい花を咲かせていた。
(「キンギョソウ」は「バイカ藻」とは別の植物である。地元の人は、金魚鉢に入れる藻として使っているので「キンギョソウ」と呼んでいる)
この池の湧水は容易に汲取ることができるが、湧水口から直接汲むことができないので飲用には向かない。
谷川で口をすすぐ程度に考えたほうが良い。
不動湯
富士吉田市の東にそびえる杓子山。
その中腹に不動湯温泉(鉱泉)がある。このすぐ近くに不動湯の湧水がある。
富士吉田市大明見から忍野に抜ける鳥居地峠越えの山道、そこを大明見から2Km程度登り杓子山と峠の分岐を右に折れ少し進むと崖の上から清水が湧き出している。
これが不動湯の湧水だ。さおで導き汲取り口ができている。
確認に行った日は雨模様の霧が濃い悪天候だったが、県外車など数台の車が止まり、汲取りの順番を待っていた。
富士吉田市内のうどん屋さんにはこの水を出している店がある。
コーヒーなどに使うと水道の水が使えないと言う人がいる。
不動湯温泉はアトピーに良いと言われている。
この山から湧き出す湧水はなにか特別なミネラル成分があるのかも知れない。

鳴沢道の駅

(なるさわ不尽の名水)
鳴沢村から精進湖に向かう国道139号線沿いに「鳴沢道の駅」がある。
その一角の富士山博物館手前右に鳴沢湧水がある。
「そんなとこに湧水があったっけー」(地方弁である)
そう思う地元民は多いのではないか。
それもそのはず、この水は地下300mのボーリングをして汲み上げたものなのだ。
しかも、きちんと飲用に処理しているので、水道水のようなものと言える。(保存用ではないと注意あり)
これが湧水かとも思えるが、水はうまい。
ハイカーなどが大勢利用している。
道の駅なのでトイレもあり、格好の立ち寄りスポットと言える。

恩賜林組合の湧水
富士山吉田口登山道の入り口、中の茶屋から左に滝沢林道が分岐している。
その滝沢林道を途中まで登ると左側に湧水がある。
コンクリートで造られた貯水槽と水道のようになった蛇口、そこからすごい勢いで流れる清水。
しかし、すぐ脇には「この水は飲用には適しません」との注意書きがある。

注意書きを背にせっせと水を汲む人が続いている。

湧水今昔
富士吉田市内にはこの他にも湧水があった。
月江寺の池、小舟山の湧水だ。


月江寺は富士急行線月江寺駅を降りて左手に入ったところにある古寺だ。
その一角に小さな池がある。西側に湧水口があり、コンコンと湧き出す清水は、下浅間(下吉田浅間神社)前を通る宮川に注いでいた。
しかし、いつだったか、この池が干上がってしまった。湧水が止まってしまったのだ。
平成14年の現在は満面の水をたたえているので湧水が復活したかに見えるが、実は別の場所から水を引いているようである。湧水は枯渇したままとなっている。(2002年7月現在)

ところが、2003年9月この湧水が復活しました。どうしてでしょうか。


「小舟山」と言って、「ああ、あの山か」という人は私のように50才前後より高齢の方が多いと思う。
現在は宅地開発されて山は存在しない。月江寺駅と下吉田駅の間のお姫坂踏切を北に進んだ大正寺前に小高い裸の山があった。
茶色の山肌をして、雨が降ると所々で崩れそうな軟弱な地層の山だった。粘土がとれたので、子供の頃は良く遊びに行った山である。
その山の下から新町にすごい勢いで湧き出る湧水があった。平成に入っても湧出していたが、「ここ4・5年位まったくでなくなった」とすぐ脇の家の主婦が教えてくれた。「うちは湧き出すと大変なんですよ、以前も湧き出した水があふれ床上浸水したんです」と話してくれた。
この湧水は河口湖が増水すると増え、枯渇すると減少する傾向があったようである。
「年寄りの言うには田植えの時期になると湧き出すと言っていたが、ここ数年は全くでなくなった」とまた湧き出すことを期待した言葉が返ってきた。
ここも平成14年現在枯渇したままである。(2002年7月現在)

実はこちらも2003年9月現在復活しました。月江寺の池の湧水が湧き始めたので、もしやと思いましたが、その通りでした。きれいな湧水が元小舟山の下から新町に湧き出していました。

不安
富士山に降った雨水が地下浸透し湧水となっているなら、雨水がある限り無限に湧水は湧きつづけると考えられる。
しかし、最近は各地で温泉ができ、また、色々な理由で富士山の水が汲み上げられている。
地下の水も無限に水量がある訳ではない。各地で汲み上げれば、地下水脈の流れがどのように変わるか見極めないと全体として枯渇が発生することも考えられる。
そうなれば需要と供給のバランスが崩れ、人為的な間違いを起こさないとも限らない。
自然は適当なバランスを保ってこそ維持される側面がある。
人間の欲望で突き進んでいないかもう一度振り返ってみることも必要ではないか。
枯渇した湧水に少しの不安を感じるのは私だけではないだろう。(2002年7月現在)

2003年9月月江寺などの湧水が復活したが、この不安が解消されたわけではない。今年(2003年)の長雨で河口湖が増水したのかと考えたが、河口湖の水位は0m以下だった。自然は気まぐれなのだろうが、その原因が分かれば付き合い方も分かりうまく共存できるだろう。

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大正から昭和の文書には「個」と言う単位が良く使われている。「泉瑞の湧水量推定0.05〜0.1個」(上記農林省文書)のように。個は毎秒1立方尺の流水量だそうである。(昭和4年「富士山の地質と水理」)

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