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 朝の紅富士 富士吉田市第二小学校校庭から
富士を観るのはいつが良いか。聞くまでもなく冬と答えるだろう。四季を通して冬の富士が最も好まれる容姿に異論がない。しかし、いつ観ても飽き飽きするのも冬の富士だと答えたらお叱りをうけるだろうか。雲ひとつない冬富士は真っ青な空に威厳を漂わせて聳え立っている。偏西風に飛ばされきれなかった残雪がまだらにへばりついた側壁は人を頑として受付けない堅物のようにも映る。晴天が続くと、本当に毎日飽き飽きするぐらい同じ顔を見せてくれる。しかし、しかしである。晴天でも早朝とか、夕方には違った顔を見せてくれるのを忘れていた。飽き飽きするのは、毎日同じ時間に見ていたせいだった。早朝6時、まだ暗い2月富士山は巨大な黒い山だ。しばらくすると東の山の向うが薄明るくなり、富士山頂が黒から赤に変化し始める。信号機の点滅が明るく見える。紅富士と呼ばれるように、白い山肌が紅潮したようにピンクに染まる。吐く息はタバコの煙のようにはっきりと見える。雪解けの水が路面に凍り付いている。富士北麓は、まだ、冷え込んで、しじまの中だが、日本一高い富士山は早くも始動を始めている。ほんの数分で天空が明るくなる。さっきまでのピンクが真っ白に変わる。明るくなるとなぜか富士山中腹北側に雲が出てくる。やがて雲は富士山の中腹に帯のように漂う。雲は西から東に、北富士演習場の上空に伸びていく。山頂から宝永山の方向に伸びる稜線にも舞い上がる雲が踊る。この雲は実は雲ではなく、山腹の雪が風に舞ってできた”雲”なのだ。山頂からは東に水平に細い雲が筋をつける。これも雪が飛ばされたものだろうか。もしかすると、雲と雪とが混ざったものかも知れない。目の前の信号は景色の中に溶け込み普段の町並みの向こうにどっしりとした富士が、どこかの寡黙のおやじのように座っている。飽き飽きするけど、いないと困る頼れる富士がある。日が沈む頃、ちょっとブルッと感じ始めると同期して、朝わきたった雲がサーッと引いていく。富士の稜線がくっきりと空と地上とを区分する。下界が薄暗く、再び信号機がサンサンと輝きを増す頃、富士を見上げると大室山上空から左上にサーチライトのような光がくっきりと現れる。やがて、その線は山頂めがけて登り始める。夕方の紅富士が瞬間に現れる。瞬きをする間に富士は真っ黒なシルエットに衣装換えする。やがて長い長い時間をかけて天空も緻密なブラインドをゆっくりと閉じる。小さな、しかし無数の輝きが天空をちりばめる。夜のしじまに再び富士が溶け込む。画家の千住博はフジヤマミュージアムでの「流星」発表会で雪を冠した富士を見たとき「アイスクリームのように食べたくなる」富士と表現した。飽き飽きするような変哲のない昼の冬富士にも、こんな見方もあったのか。冬富士、人々を万葉の昔から魅了する富士が今年もそこにある。
河口湖猿山公園からの富士 富士吉田から夕方の富士
栃木からの富士(定方氏提供)

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上空からの富士