富士北麓
四季の詩
冬
キンキンと空気が凍る
白い肌が紅く染まる
静寂の中
山麓に吐息が聞こえる
眠りから覚めた小鳥が
忙しく木々を渡る
凍てついた衣が
軟らかな虹色に変わる
北西の強い風
舞い上がる雪が雲を呼ぶ
出陣の旗音が聞こえる
冬
北麓の白い冬
暖めるとジンとくる手が
遅い春を待つ
春
ポタンポタンとしずくが落ちる
浅いガラを伝い
やがてコンコンと湧き上る
命を育む水
木々の芽がふくらみ
白が緑に変わる
かじかんだ身体を広げると
空気がうまい
鳥や虫達がとび
愛の花粉が舞う
春
北麓の緑の春
雪解けの透ける春が
短い夏を待つ
夏
ミンミンと満点から降る声
天空を隠す葉
少しの風がうまい
見上げると
クリームのような雲に
赤い山が突き刺さり
われを呼ぶ
夏
北麓の赤い夏
はちきれんばかりの夏が
実りの秋を待つ
秋
ザワザワと
稲穂が揺れる
はるか高くすじ雲が覆う
突き出た枝に
食べかけの赤い実
粉砂糖をまぶしたデコレーション
晴天をのぞむわら葺に
日だまりがうれしい
秋
北麓の黄色い秋
満足げな秋に
足早な冬が近づく
北麓の四季
北麓は四季の色
白緑赤黄
心喜ぶ
四季の色
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